所得税法等改正案
所得税の基礎控除・給与所得控除を見直し、NISAや住宅ローン控除、防衛特別所得税も調整する改正です。
公布済み
次: 公布・施行
一言で言うと
物価上昇で税負担が重くなりすぎないよう、所得税の控除額を上げ、給与収入178万円まで課税最低限を広げるなど、家計への課税ラインを見直す改正です。
この法案のポイント

何が変わる?
所得税の控除を物価に合わせて引き上げ、給与収入178万円までを課税最低限にする改正です。
基礎控除は58万円から62万円、給与所得控除の最低保障額は2026・2027年分の特例で65万円から74万円になり、NISA、防衛特別所得税、海外通販の消費税も見直します。

なぜ今?
物価上昇で控除の実質的な価値が下がることへの対応です。
2025年度改正で基礎控除を48万円から58万円、給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に上げたうえで、2024年と2025年の消費者物価上昇を踏まえてさらに見直します。

誰に関係する?
給与所得者、扶養家族がいる世帯、個人事業者、投資家、海外旅行者に関係します。
2026年分は12月の年末調整で反映され、扶養判定の所得要件、NISAの対象年齢、インボイス経過措置、国際観光旅客税にも変更が入ります。
詳しく読む
所得税の控除を物価連動へ、給与収入178万円の課税最低限に
💴 所得税 / 📈 物価連動控除 / 🧾 消費税・インボイス / 🛡 防衛財源
所得税の基礎控除などを物価に合わせて見直す仕組みを入れ、2026・2027年分は給与収入178万円までを所得税の課税最低限とします。NISA、住宅ローン控除、企業の投資減税、インボイス経過措置、防衛特別所得税もあわせて見直します。
詳細資料:財務省「令和8年度税制改正」パンフレット
💡 一言で言うと
物価で目減りした所得税の控除を上げ、給与収入178万円まで課税最低限にします。
基礎控除(所得から誰でも差し引ける額)は、合計所得2,350万円以下の人で58万円から62万円になります。給与所得控除(会社員などの必要経費にあたる控除)の最低保障額も、2026・2027年分は特例を含めて65万円から74万円になります。
この2つを合わせると、給与収入だけの人の場合、所得税がかかり始める目安が178万円になります。
🔑 何が変わるのか
主な改正点は次のとおりです。
- 所得税の基礎控除などを2年ごとに物価上昇へ連動して見直します。
- 2026・2027年分は、一定の中低所得層で基礎控除を最大104万円にします。
- 扶養親族などの所得要件を58万円以下から62万円以下へ引き上げます。
- 超高所得層向けの追加課税の計算を、3.3億円・22.5%から1.65億円・30%へ見直します。
- 0〜17歳もNISAのつみたて投資枠を使えるようにします。
- 海外通販の1万円以下の商品や大規模プラットフォーム経由の販売に、消費税を課す仕組みを整えます。
- 国際観光旅客税は、出国1回あたり1,000円から3,000円になります。
- 2027年1月から、所得税額に1%を上乗せする防衛特別所得税を創設します。同時に復興特別所得税は2.1%から1.1%へ下がります。
🏛️ 背景(なぜ今この改正なのか)
背景にあるのは、物価上昇です。基礎控除の額が固定されたままだと、物価が上がった分だけ控除の実質的な価値が下がり、同じ生活実感でも税負担が重くなりやすくなります。
2025年度改正では、基礎控除を48万円から58万円へ、給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円へ引き上げました。今回の改正では、さらに2024年と2025年の消費者物価の上昇を踏まえ、控除額をもう一段引き上げます。
同時に、企業の設備投資や研究開発、海外通販への消費税、インボイス制度の経過措置、防衛財源などもまとめて改正します。いわゆる年度税制改正を一括して行う法律です。
📊 現行制度と改正後の違い
所得税の控除
基礎控除は次のように変わります。
- 現行:合計所得2,350万円以下は58万円
- 改正後:合計所得2,350万円以下は62万円
2026・2027年分は、さらに特例があります。
- 合計所得489万円以下:基礎控除は104万円
- 合計所得489万円超655万円以下:基礎控除は67万円
- 合計所得655万円超2,350万円以下:基礎控除は62万円
給与所得控除の最低保障額は、次のように変わります。
- 現行:65万円
- 改正後の本則:69万円
- 2026・2027年分の特例:74万円
給与収入だけの人では、基礎控除104万円と給与所得控除74万円を合わせ、178万円が所得税の課税最低限になります。
年末調整と源泉徴収
2026年分については、11月までの給与などの源泉徴収事務は変わりません。12月の年末調整で、改正後の控除額を使って1年分の税額を計算し、差額を精算します。
2027年1月以後に支払う給与などからは、新しい源泉徴収税額表が使われます。
扶養判定への影響
扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子の所得要件は、次のように変わります。
- 現行:合計所得58万円以下
- 改正後:合計所得62万円以下
給与収入だけの場合の目安は、123万円以下から136万円以下になります。
勤労学生の所得要件も、85万円以下から89万円以下へ上がります。
NISAと住宅ローン控除
NISAは、つみたて投資枠の対象年齢が0〜17歳にも広がります。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です。施行は2027年1月1日です。
住宅ローン控除は、適用期限が2025年12月31日入居分までから2030年12月31日入居分までに5年延びます。一定の既存住宅では、借入限度額や控除期間も見直されます。
超高所得層への追加計算
極めて高い所得がある人について、通常の所得税額が一定の計算額を下回る場合に差額を納める仕組みがあります。
今回、その計算が次のように変わります。
- 現行:基準所得金額から3.3億円を差し引き、22.5%をかける
- 改正後:基準所得金額から1.65億円を差し引き、30%をかける
2027年分の所得から適用されます。
企業向け税制
大規模な設備投資を行う企業向けに、新しい税制措置を設けます。一定の投資計画に基づく設備について、即時償却または7%の税額控除を選べます。建物などは4%です。
研究開発税制では、AI、量子、半導体・通信、バイオ、核融合、宇宙などの分野について、戦略技術領域型を新設します。税額控除率は40%、一定の共同・委託研究は50%です。
大企業向けの賃上げ促進税制は、2026年3月31日をもって廃止されます。
消費税・インボイス・海外通販
海外通販のうち、1万円以下の商品について、2028年4月1日から販売者に消費税の納税義務を課す仕組みに変わります。
また、対象取引が年間50億円超のプラットフォーム事業者には、国外事業者などに代わって消費税を納める仕組みを導入します。こちらも2028年4月1日からです。
インボイス制度では、小規模な個人事業者向けに、売上税額の3割を納めればよい経過措置を2027・2028年分に設けます。
免税事業者からの仕入れに関する控除割合は、段階的に次のようになります。
- 2026年10月〜2028年9月:70%
- 2028年10月〜2030年9月:50%
- 2030年10月〜2031年9月:30%
- 2031年10月以後:0%
1つの免税事業者からの仕入れに使える年間上限は、10億円から1億円に下がります。
国際観光旅客税
日本から出国する旅客にかかる国際観光旅客税は、2026年7月1日以後の出国から、出国1回につき1,000円から3,000円になります。
防衛特別所得税
2027年1月から、防衛特別所得税を創設します。所得税額に対して1%を上乗せする税です。
同時に、復興特別所得税は2.1%から1.1%へ下がります。復興特別所得税の課税期間は、2037年までから2047年までに10年延びます。
👥 影響を受ける人・対象者
給与所得者は、2026年12月の年末調整から控除額の引上げが反映されます。
扶養に入る配偶者や子、学生アルバイトがいる世帯では、扶養判定の所得要件が変わります。
海外旅行や出張で日本を出国する人は、2026年7月以後の国際観光旅客税の引上げが関係します。
個人事業者や小規模事業者は、インボイスの3割特例や、免税事業者からの仕入れに関する控除割合の変更が関係します。
大規模な設備投資や研究開発を行う企業は、新しい投資減税や研究開発税制の対象になる場合があります。
🗣️ 国会での扱い
この法律案は、2026年2月20日に内閣から提出されました。衆議院では3月13日に可決、参議院では3月31日に可決され、同日に公布されました。
法律番号は令和8年法律第12号です。原則として2026年4月1日から施行されますが、所得税の控除、NISA、防衛特別所得税、海外通販の消費税などは、それぞれ別の適用時期が定められています。
参議院の議案要旨では、この法律施行に伴う2026年度の租税減収見込額は約5,760億円とされています。
🔗 参考リンク
- 参議院 議案情報「所得税法等の一部を改正する法律案」
- 財務省「所得税法等の一部を改正する法律案」について
- 財務省「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
- 財務省「令和8年度税制改正」パンフレット
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度)」
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