健康保険法等改正案
薬代の一部負担、出産費用の支払い方、子どもの国保料軽減など、公的医療保険の給付と負担を見直す改正です。
公布済み
次: 公布・施行
一言で言うと
薬代、出産費、子どもの保険料などをめぐる医療保険のお金の流れを見直し、負担と支援の配分を変えて、保険制度を続けやすくする改正です。
この法案のポイント

何が変わる?
薬代の一部負担、出産費用の支払い方、子どもの国保料軽減など、公的医療保険の給付と負担を見直す改正です。
市販薬に近い処方薬は薬剤費の4分の1を保険給付の外にし、出産では標準的な分娩費を保険者から施設へ直接払う仕組みを作ります。国保の子ども均等割5割軽減は高校生年代まで広げます。

なぜ今?
医療費の増加と、保険料を支える現役世代の負担への対応が背景です。
令和5年度の国民医療費は48兆915億円で、財源のうち保険料が50.2%を占めます。出産育児一時金を引き上げても妊婦の負担軽減につながりにくい課題や、後期高齢者医療で金融所得の扱いに差が出る課題もあります。

誰に関係する?
患者、出産する家庭、国保に入る子どもがいる世帯、75歳以上の一部の人に関係します。
対象になり得るのは、市販薬に近い薬を処方される人、分娩を扱う医療機関、上場株式の配当などの金融所得がある後期高齢者、高額療養費制度を使う長期療養者などです。
詳しく読む
医療保険の給付と負担を組み替える包括改正
🏥 医療保険 / 💊 薬代 / 👶 出産・子ども支援 / 🧓 後期高齢者医療
健康保険法等改正案は、薬代の一部負担、出産費用の支払い方、国民健康保険の子ども保険料軽減などをまとめて見直す法案です。
医療費が増える中で、保険で支える範囲と、負担に反映する所得の扱いを組み替えます。
💡 一言で言うと
薬代・出産費・子ども保険料を中心に、医療保険のお金の流れを見直す法案です。
市販薬に近い一部の処方薬は、薬剤費の4分の1を保険給付の外にします。出産では、現在の「原則50万円の出産育児一時金」を、標準的な分娩費用を保険者から施設へ直接支払う仕組みに改めます。
国民健康保険では、子どもの均等割保険料(加入者1人ごとにかかる保険料)の5割軽減の対象を、未就学児から高校生年代まで広げます。
🔑 何が変わるのか
主な変更は次の通りです。
- 市販薬に近い処方薬について、薬剤費の4分の1を自己負担する「一部保険外療養」を新設
- 出産費用について、標準的な分娩費用を保険者から施設へ直接支払う仕組みを導入
- 妊婦健診について、国が「標準額」を定め、費用や内容の見える化を進める
- 国民健康保険の子ども均等割5割軽減を、未就学児から高校生年代まで拡大
- 75歳以上の後期高齢者医療で、上場株式の配当などの金融所得を保険料や窓口負担判定に反映
- 高額療養費制度では、長期療養者の家計への影響を考慮することを法律に明記
- 医療機関の業務効率化・勤務環境改善を支援する基金事業と認定制度を設ける
この法案は内閣提出法案です。令和8年3月13日に提出され、衆議院では4月28日に可決され、参議院へ送られています。
🏛️ 背景:なぜ今この改正なのか
背景にあるのは、医療費の増加と、保険料を支える現役世代の負担です。
令和5年度の国民医療費は48兆915億円で、1人当たりでは38万6,700円でした。財源のうち保険料は24兆1,383億円で、全体の50.2%を占めています。
一方で、出産費用も上がっています。出産育児一時金は令和5年4月に原則42万円から原則50万円へ引き上げられましたが、厚生労働省資料は「支給額を引き上げても妊婦の負担軽減につながらない」という課題を示しています。
また、75歳以上の医療保険では、株式配当などの金融所得が、確定申告するかどうかで保険料や窓口負担に反映される場合とされない場合がありました。今回の改正は、この差を埋める仕組みを作るものです。
📊 現行制度と改正後の違い
💊 薬代:市販薬に近い薬は4分の1を保険外へ
現行では、医師が処方する医療用医薬品は、原則として医療保険の対象です。患者は年齢や所得に応じた自己負担割合を支払います。
改正後は、薬局やドラッグストアで買える市販薬との代替性が特に高い薬について、薬剤費の4分の1を「特別の料金」として保険給付の外にします。
厚生労働省資料では、当初の対象は77成分、約1,100品目とされています。主な対象症状として、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状、水虫、口内炎などが挙げられています。
子ども、がんや難病などの慢性疾患がある方、低所得者、入院患者、医師が長期使用を医療上必要と判断する方などへの配慮は、今後の制度設計で検討されます。
👶 出産:50万円一時金から「分娩費+一時金」へ
現行制度では、公的医療保険の加入者が出産したとき、子ども1人につき原則50万円の出産育児一時金が支給されます。直接支払制度を使う場合、保険者から出産施設へ支払われ、本人は差額を窓口で支払います。
改正後は、保険診療以外の標準的な分娩費用について、国が基本単価を設定し、保険者から施設へ直接支払う「分娩費」を作ります。
さらに、保険診療の一部負担金などを軽くするため、全ての妊婦に定額の「出産時一時金」を支給する仕組みも設けます。具体的な金額は、今後の政令や告示で定める仕組みです。
🤰 妊婦健診:標準額と情報公表を導入
妊婦健診は、市町村の公費負担により支えられていますが、地域や医療機関によって自己負担に差があります。
改正後は、国が妊婦健診の「望ましい基準」に沿った検査について標準額を定めます。市町村と医療機関は、その標準額を勘案するよう努めます。
あわせて、健診の内容や費用を集め、妊婦が分かりやすい形で公表する仕組みを設けます。
👧 国保の子ども保険料:高校生年代まで5割軽減
国民健康保険には、所得に応じてかかる部分のほか、加入者1人ごとにかかる「均等割」があります。子どもにも均等割がかかるため、子どもが多い世帯ほど保険料が増える構造です。
現行では、未就学児の均等割保険料(税)について5割を軽減しています。
改正後は、この対象を18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、つまり高校生年代まで広げます。厚生労働省資料では、対象者は約50万人から約180万人に増える見込みです。
🧓 後期高齢者医療:金融所得を反映
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、保険料や窓口負担割合の判定に所得が使われます。
改正後は、上場株式の配当などについて、金融機関等が法定調書の情報を後期高齢者医療広域連合へオンラインで提出する仕組みを設けます。
これにより、確定申告をしない場合でも、一定の金融所得を保険料や窓口負担割合の判定に反映できるようにします。
🏥 高額療養費と医療機関支援
高額療養費制度は、1カ月の医療費負担が上限額を超えた場合に負担を軽くする制度です。
改正後は、支給要件や支給額を定める際に、特に長期にわたって治療を受ける方の家計への影響を考慮することを法律に明記します。
医療機関については、業務効率化や勤務環境改善を支援する新たな基金事業を設けます。計画を作って取り組む病院を、厚生労働大臣が認定する仕組みも作ります。
👥 影響を受ける人・対象者
影響が出る可能性があるのは、主に次の方や組織です。
- 市販薬に近い薬を医療機関で処方される方
- 妊娠・出産を予定する方、分娩を扱う病院・診療所・助産所
- 国民健康保険に加入する高校生年代までの子どもがいる世帯
- 上場株式の配当などの金融所得がある75歳以上の方
- 高額療養費制度を使う長期療養者
- 病院・診療所、都道府県、医療保険の保険者
📅 施行日と経過措置
施行日は項目ごとに分かれます。
- 高額療養費制度の考慮事項の明確化:令和8年8月1日
- 一部保険外療養:公布後1年以内。厚生労働省資料では令和9年3月1日施行を想定
- 国保の子ども均等割軽減拡大:令和9年4月1日
- 医療機関の業務効率化・勤務環境改善支援:令和9年4月1日。一部は令和9年1月1日
- 出産給付と妊婦健診の見直し:公布後2年以内
- 後期高齢者医療での金融所得反映:公布後5年以内
- 国民健康保険の資格手続の一部見直し:令和10年4月1日
出産給付については、施設の選択により、当分の間、現行の出産育児一時金の仕組みを使うことも可能とされています。
🔭 今後決まること
この法案は、制度の枠組みを法律で作るものです。具体的な金額や対象範囲は、政令・省令・告示で決まる項目が多く残ります。
特に、次の点は今後の制度設計で確認が必要です。
- 一部保険外療養の最終的な対象医薬品
- 子どもや慢性疾患患者などへの配慮の具体的な内容
- 分娩費の基本単価と加算
- 出産時一時金の金額
- 妊婦健診の標準額
- 金融所得を反映するためのデータ連携の詳細
🔗 参考リンク
- 厚生労働省:第221回国会(令和8年特別会)提出法律案
- 厚生労働省:健康保険法等の一部を改正する法律案の概要
- 厚生労働省:健康保険法等の一部を改正する法律案要綱
- 厚生労働省:法律案案文・理由
- 厚生労働省:第211回社会保障審議会医療保険部会 資料1
- 参議院:健康保険法等の一部を改正する法律案 議案情報
- 厚生労働省:出産育児一時金等について
- 厚生労働省:令和5年度 国民医療費の概況
- 厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
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