安全・司法

民法等改正案

成年後見を使いやすくし、遺言を法務局で作成・保管できる仕組みを入れる民法等改正です。

第221回国会閣法第43号提出者: 内閣提出: 2026/4/2
成立

公布済み

次: 公布・施行

先委先本後委後本成立

一言で言うと

判断を助ける成年後見の仕組みを使いやすくし、遺言を法務局で電子的に保管できるようにして、本人の意思を残しやすくする改正です。

この法案のポイント

制度変更を表すイラスト

何が変わる?

成年後見を使いやすくし、遺言を法務局で作成・保管できる仕組みを入れる民法等改正です。

成人向けの法定後見は「後見・保佐・補助」の3類型から補助中心の仕組みに変わり、判断能力を欠く人には特定補助人を付けられるようになります。遺言では保管証書遺言を新設し、電子データの遺言も想定します。

背景やタイミングを表すイラスト

なぜ今?

高齢化と単身高齢者世帯の増加で、本人の意思を尊重しながら財産管理や相続準備を支える必要が高まっているためです。

預貯金の管理、施設入所、不動産の処分、相続放棄や遺産分割などでは、本人の意思確認と必要な範囲の支援が課題になります。遺言についても、デジタル技術を踏まえ、紙中心だった方式に新しい選択肢を加えます。

関係する人や地域を表すイラスト

誰に関係する?

判断に支援が必要な本人、家族、自治体・福祉関係者、専門職、相続に備える人に関係します。

補助人は本人に情報を提供し、意向を把握・尊重する義務を負います。自筆証書遺言の押印要件見直し、危急時遺言の録音・録画方式、法務局での遺言保管も実務に関わります。

詳しく読む

成年後見を「補助」に一本化、電子データの遺言も新設へ 民法等改正案をやさしく解説

🧓 成年後見 / 📝 遺言 / 🏛️ 家庭裁判所・法務局

第221回国会に提出された「民法等の一部を改正する法律案」は、成年後見と遺言の仕組みを見直す法案です。

判断能力に不安がある人を支える制度を「補助」にまとめ、電子データで作る遺言を法務局で保管できる仕組みを新設します。

💡 一言で言うと

成年後見を「補助」にまとめ、電子の遺言を法務局で保管できるようにする法案です。

現行制度では、判断能力の状態に応じて「成年後見」「保佐」「補助」の3類型があります。改正案では、成人向けの法定後見を「補助」に一本化し、必要な行為ごとに同意・取消し・代理の範囲を家庭裁判所が決める形に近づけます。

あわせて、遺言については、紙に手書きする自筆証書遺言などに加え、電磁的記録で作る「電子保管証書遺言書」を含む新しい方式を設けます。

🔑 何が変わるのか

主な変更点は、次の3つです。

  • 成人向けの法定後見は、3類型から「補助」中心の仕組みに変わります。
  • 判断能力を欠く状態にある人には、「特定補助人」を付ける仕組みができます。
  • 遺言は、法務局で保管する「保管証書遺言」が新設され、電子データで作る形も想定されます。

ここでいう後見の見直しは、成人向けの制度です。子どものための未成年後見は、名称を整理したうえで残る扱いです。

🏛️ 背景:なぜ今この改正なのか

政府の提出理由では、高齢化の進展や単身高齢者世帯の増加が挙げられています。高齢者が一人で暮らす世帯が増えると、預貯金の管理、施設入所、不動産の処分、相続準備などで、本人の意思をどう確認し、どう支えるかが身近な課題になります。

現行の成年後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「後見・保佐・補助」に分かれています。改正案は、この区分を見直し、本人に必要な範囲で支援を付けやすくする内容です。

遺言については、デジタル技術の進展を踏まえ、紙中心だった方式に電子データを取り入れる方向です。法務局で保管する仕組みと組み合わせることで、遺言の作成・保管の選択肢を増やします。

📊 現行制度と改正後の違い

1. 成年後見制度:3類型から「補助」へ

現行制度は、成人向けの法定後見として次の3類型があります。

  • 成年後見:判断能力を欠く常況にある人
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な人
  • 補助:判断能力が不十分な人

改正案では、新たに申し立てる制度を基本的に「補助」へ一本化します。

補助開始の申立てができる人には、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、本人が公正証書で指定した人、検察官が含まれます。

本人以外の人が申し立てる場合は、本人の同意が必要です。ただし、本人が意思を表示できない場合は例外とされます。

2. 補助人の同意が必要な行為を家庭裁判所が決める

改正案では、家庭裁判所が必要と認める場合に、補助人の同意が必要な行為を定めます。

対象になり得る行為は、たとえば次のようなものです。

  • 預金・貯金の預入れや払戻し
  • 借金や保証
  • 不動産など重要な財産に関する取引
  • 訴訟行為
  • 贈与、和解、仲裁合意
  • 相続の承認・放棄、遺産分割
  • 長期の賃貸借

同意が必要とされた行為を、同意なしに行った場合は、取り消すことができます。日用品の購入など日常生活に関する行為は対象外です。

3. 「特定補助人」ができる

判断能力を欠く常況にある人については、家庭裁判所が必要と認める場合に、特定補助人を付けることができます。

特定補助人には、主に次の権限が与えられます。

  • 取り消すことができる行為について取消権を行使する
  • 本人に対する意思表示を受け取る
  • 本人の財産を保存する行為をする

特定補助人には、財産調査にも一定のルールが置かれます。特定補助人として定められた後、原則として1か月以内に財産の調査を終え、目録を作成する必要があります。

また、必要がある場合には、家庭裁判所が郵便物等を特定補助人に配達するよう嘱託できます。この期間は6か月以内です。

4. 本人の意向を把握し、尊重する規定を置く

改正案では、補助人が事務を行うときに、本人に情報を提供し、本人の意向を把握するよう求めます。

そのうえで、把握した本人の意向を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しなければならないと定めます。

補助人は、家庭裁判所の定めるところにより、毎年1回、本人の状況などを家庭裁判所に報告します。

📝 遺言制度はどう変わるのか

1. 「保管証書遺言」が新設される

現行の普通方式の遺言は、主に次の3種類です。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

改正案では、ここに保管証書遺言を加えます。

保管証書遺言は、遺言者が作成した証書を、法務局の遺言書保管官の前で確認し、法務局で保管する方式です。電子データで作成されたものは、電子保管証書遺言書として扱われます。

2. 法務局で保管しなければ効力が生じない

保管証書遺言は、法律案上、法務局で保管されなければ効力が生じません。

遺言者は、遺言書保管官の前で、証書に記載・記録された遺言の全文を口述します。口がきけない人の場合は、通訳人による申述や自書で代えることができます。

具体的な作成方法や手続の詳細は、法務省令に委ねられる部分があります。

3. 自筆証書遺言などの押印要件を見直す

改正案では、自筆証書遺言について、押印を求める規定を見直します。

現行では、自筆証書遺言は本文・日付・氏名を自書し、押印する必要があります。改正案では、押印に関する部分を削り、署名を中心にした形に改めます。

4. 危急時の遺言に録音・録画を使えるようにする

死亡の危急に迫った人の遺言など、特別な状況で作る遺言について、録音と録画を同時に行う方法を取り入れます。

たとえば、証人1人以上の立会いのもとで、遺言の趣旨を伝える状況を録音・録画する方式が設けられます。映像と音声で相手の状態を確認できる方法による立会いも定められます。

👥 影響を受ける人・対象者

この法案が関係しやすいのは、次のような人や機関です。

  • 認知症、知的障害、精神障害、病気などで判断に支援が必要な人
  • 家族の財産管理や契約手続を支える親族
  • 後見・補助の申立てに関わる自治体、福祉関係者、専門職
  • 相続に備えて遺言を作りたい人
  • 法務局での遺言書保管制度を使う人
  • 家庭裁判所、法務局、公証人

生活に近い場面では、銀行手続、介護施設の契約、不動産の売却、相続放棄や遺産分割、遺言書の作成・保管に関わってきます。

📅 施行日と経過措置

施行日は、法案が成立・公布された後に政令で定められます。

法律案では、主に次のように分かれています。

  • 成年後見・保佐・補助の見直しなど:公布の日から2年6か月以内
  • 自筆証書遺言の押印見直し、危急時遺言の録音・録画方式など:公布の日から1年以内
  • 保管証書遺言、電子保管証書遺言書、遺言書保管法の改正:公布の日から3年以内

施行前にすでに成年後見や保佐の審判を受けている人については、原則として従前の扱いが残ります。

一方、施行前に申し立てられ、まだ確定していない後見開始・保佐開始の申立ては、施行後は新しい補助開始の申立てとみなされます。すでに補助開始の審判を受けている人は、新しい補助開始の審判を受けた人とみなされます。

📖 用語解説

成年後見制度

判断能力が不十分な人について、家庭裁判所が選んだ人が、契約や財産管理などを支える制度です。

補助

判断能力が不十分な人に対し、必要な範囲で同意、取消し、代理などの支援を付ける仕組みです。改正案では、この補助が成人向けの法定後見の中心になります。

特定補助人

判断能力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が必要と認めた場合に付ける補助人です。取消権や財産保存などの権限を持ちます。

任意後見

本人が元気なうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、支援してもらう人を契約で決めておく制度です。

保管証書遺言

法務局で保管することを前提にした新しい遺言方式です。紙の書面だけでなく、電磁的記録で作る方式も含まれます。

電磁的記録

電子データのことです。法律上は、電子的方式や磁気的方式など、人がそのまま読むのではなく、コンピューターで処理する記録を指します。

🔗 参考リンク


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