農業・食料

重要品種・種苗生産振興法案

高温や病気、人手不足に強い農作物の品種を「重要品種」として位置づけ、育成と種苗生産を支援する法案です。

第221回国会閣法第46号提出者: 内閣提出: 2026/4/2
審議中

衆議院 本会議を通過

次: 参議院 委員会

先委先本後委後本成立

一言で言うと

暑さや病気、人手不足に強い農作物の品種づくりを、研究から種苗の生産まで国が後押しし、食料生産の基盤を強くする法案です。

この法案のポイント

制度変更を表すイラスト

何が変わる?

高温や病気、人手不足に強い農作物の品種を「重要品種」として位置づけ、育成と種苗生産を支援する法案です。

農研機構、都道府県、大学、民間企業などの育成計画を農林水産大臣が認定し、研究設備利用、ドローン手続特例、品種登録費用の軽減につなげます。種苗生産計画や栽培管理協定も制度化します。

背景やタイミングを表すイラスト

なぜ今?

農業の担い手が減り、気候変動による高温や病害への対応が必要になっているためです。

2025年農林業センサス概数値では、農林業経営体は83万9千経営体で5年前より23.2%減少しました。基幹的農業従事者も102万1千人で25.1%減っており、省力化、多収化、高温耐性、耐病性のある品種の普及が課題です。

関係する人や地域を表すイラスト

誰に関係する?

農業者、種苗生産者、品種を育成する研究機関・大学・民間企業、都道府県・市町村に関係します。

重要品種の種苗生産に参加する場合、認定計画や栽培管理協定の対象になります。周辺農地との交雑防止などを定める協定は、認可・公告後、後から農地の権利を取得した人にも効力が続きます。

詳しく読む

気候変動に強い品種を、研究から種苗生産まで支える新法案

🌾 品種開発 / 🌡️ 気候変動 / 🌱 種苗生産 / 🧬 知的財産

暑さや病気、人手不足に対応できる農作物の品種を、国が「重要品種」と位置づけて支援する法案です。

品種をつくる研究段階だけでなく、種や苗を広く生産・普及させる地域の仕組みまで整えます。

💡 一言で言うと

暑さや人手不足に対応する品種を、研究から種苗づくりまで国が後押しします。

これまで新しい品種は、主に種苗法の品種登録によって権利を守る仕組みが中心でした。

今回の法案は、そこから一歩進めて、高温に強い、多く収穫できる、省力化につながるといった品種を「重要品種」として扱い、研究・登録・種苗生産・地域での普及までを一体で進める制度をつくるものです。

農林水産省の資料では、通称「気候変動等対応品種法案」とされています。

🔑 何が変わるのか

品種をつくる側

  • 重要品種:省力化、多収化、高温などによる生育への影響を和らげる性質を持ち、広い地域に普及できる登録品種を対象にします。
  • 国の基本方針:農林水産大臣が、重要品種の育成・普及の方向性を定めます。
  • 育成計画の認定:農研機構、都道府県、大学、民間企業などが、重要品種を育てる計画をつくり、農林水産大臣の認定を受けられます。
  • 品種登録出願の義務化:認定計画で育成した品種について、区別性が確認された場合、品種登録出願を行う仕組みになります。
  • 研究設備・手続の特例:認定計画に基づき、農研機構の研究設備の利用、ドローン飛行に関する手続の特例、品種登録出願料などの軽減・免除が可能になります。
  • 広域普及への配慮:育成者権者は、著しく高い利用料など、広い普及の妨げとなる行為をしないよう努めることになります。

種苗を増やす側

  • 都道府県基本計画:都道府県が、どの重要品種の種苗をどの地域で効率的に生産するかを計画できます。
  • 種苗生産計画の認定:種苗生産者や農業団体などが生産計画をつくり、都道府県知事の認定を受けられます。
  • 農地手続の特例:認定された生産計画に沿って農業用施設を整備する場合、農地転用許可があったものとみなす仕組みが入ります。
  • 栽培管理協定:周辺の農業者と、交雑を防ぐための栽培管理などを協定で定められます。認可された協定は、後からその農地の権利を取得した人にも効力が続きます。
  • 報告義務と罰則:認定計画の実施状況について報告を求められた際、報告しない、または虚偽報告をした場合は、30万円以下の罰金の対象になります。

🏛️ 背景:なぜ今この改正なのか

背景には、農業の担い手の減少と気候変動があります。

2025年農林業センサスの概数値では、全国の農林業経営体は83万9千経営体で、5年前より25万3千経営体、率にして23.2%減少しました。個人経営体の基幹的農業従事者は102万1千人で、5年前より34万2千人、25.1%減っています。

一方で、高温による品質低下や病害への対応も課題になっています。法案の概要資料では、高温耐性、耐病性、多収性などを持つ品種を育成・普及させる必要性が示されています。

この法案は、品種を開発する研究者だけを支える制度ではありません。実際に種や苗を増やし、農家が使える形で広げるところまでを制度化する点が特徴です。

📊 現行制度と改正後の違い

1. 品種開発の進め方

  • 現行:新しい品種は、種苗法に基づく品種登録制度で保護されます。研究支援、ドローン利用、種苗生産の土地調整は、それぞれ別の制度で扱われます。
  • 改正後:国の基本方針に沿って「重要品種育成事業計画」を認定し、研究設備の利用、ドローン飛行手続の特例、品種登録出願料などの軽減・免除を結びつけます。

2. 品種登録にかかる費用

  • 現行:品種登録の出願料は1品種14,000円です。令和4年4月1日以降に出願した品種の登録料は、登録後1〜9年目が各年4,500円、10〜30年目が各年30,000円です。
  • 改正後:認定された重要品種育成事業で、実施期間内に品種登録出願をした場合、出願料と、登録後1〜6年目までの登録料を軽減または免除できます。具体的な軽減率や免除範囲は、政令に委ねられています。

3. 種苗生産の土地利用

  • 現行:農地に農業用施設を整備するため農地を転用する場合、農地法上の許可手続が必要になります。
  • 改正後:認定された重要品種種苗生産事業活動計画に沿った農業用施設整備では、農地法の許可があったものとみなされます。4ヘクタールを超える農地が関係する場合などは、国との協議などの手続も組み込まれます。

4. 周辺農地との協定

  • 現行:この法案に基づく「栽培管理協定」の仕組みはありません。
  • 改正後:重要品種の種苗生産団地をつくるため、農用地所有者等の全員の合意で協定を結べます。協定の有効期間は最長5年です。市町村長などの認可を受け、公告後は、後から農地の権利を取得した人にも効力が続きます。

5. 公開手続と見直し

  • 都道府県基本計画の案:公告の日から2週間、公衆の縦覧に供されます。
  • 栽培管理協定の案:公告の日から2週間、利害関係人の縦覧に供されます。
  • 施行後の見直し:法律の施行後5年を目途に、施行状況を踏まえて検討する規定があります。

👥 影響を受ける人・対象者

  • 生活者:店頭での手続が変わる制度ではなく、気候変動や担い手不足に対応する品種を広げるための供給側の制度改正です。
  • 農業者・種苗生産者:重要品種の種苗生産に参加する場合、認定計画や栽培管理協定の対象になります。
  • 周辺の農地所有者等:栽培管理協定を結ぶ場合、対象区域内の農用地所有者等の全員合意が必要です。
  • 研究機関・大学・民間企業:重要品種の育成計画をつくり、認定を受けることで、研究設備利用や費用面の特例を使える可能性があります。
  • 都道府県・市町村:都道府県基本計画の作成、種苗生産計画の認定、協定の公告・縦覧など、地域での調整役を担います。

📖 用語解説

  • 種苗:農作物を育てるための種や苗のことです。
  • 品種登録:新しい品種を国に登録し、育成者権として保護する制度です。
  • 育成者権:登録品種を開発した人や組織が、その品種の利用を管理できる権利です。
  • 農研機構:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の略称です。農業や食品分野の研究開発を行う機関です。
  • 農用地区域:農業振興地域の中で、農業上の利用を確保する区域として定められる土地です。

📅 施行日と国会での位置づけ

この法案は、第221回国会に閣法第46号として、令和8年4月3日に提出された内閣提出法案です。参議院の議案情報では、衆議院先議の扱いです。

施行日は、公布の日から起算して6か月を超えない範囲で政令で定める日です。ただし、基本方針を定めるための準備規定は、公布の日から施行されます。

🔗 参考リンク


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