暮らし・福祉

労災保険法等改正案

労災保険の遺族年金、請求期限、小規模農林水産業への適用など、仕事や通勤の補償制度を見直す改正です。

第221回国会閣法第56号提出者: 内閣提出: 2026/4/6
審議中

衆議院 本会議を通過

次: 参議院 委員会

先委先本後委後本成立

一言で言うと

遺族年金の対象を広げ、小さな農林水産業の仕事にも労災保険を使いやすくして、家族や働く人への支援を広げる改正です。

この法案のポイント

制度変更を表すイラスト

何が変わる?

労災保険の遺族年金、請求期限、小規模農林水産業への適用など、仕事や通勤の補償制度を見直す改正です。

妻を亡くした夫にだけあった遺族年金の年齢・障害要件をなくし、遺族が1人の場合の年金額を給付基礎日額175日分に統一します。原因判断が難しい疾病の請求期限は2年から5年へ延びます。

背景やタイミングを表すイラスト

なぜ今?

共働きや就業形態が変わり、労災補償の男女差や適用のすき間を見直す必要があるためです。

現行制度では、妻は年齢にかかわらず遺族年金の対象ですが、夫は55歳以上または一定の障害が必要でした。小規模な個人経営の農林水産業も、事業場把握の難しさなどから暫定的に任意加入とされてきました。

関係する人や地域を表すイラスト

誰に関係する?

労災を受ける労働者と遺族、小規模な農林水産業の事業主・労働者、一人親方の特別加入団体に関係します。

新たに強制適用となる事業主には、労働保険の成立手続や保険料申告・納付が関わります。特別加入団体は、要件の法令化や業務改善命令の対象になり、運営の適正化が求められます。

詳しく読む

労災保険のすき間を縮める改正へ 遺族年金の男女差も見直し

🧑‍🏭 労災保険 / 👪 遺族年金 / 🌾 小規模農林水産業

仕事中や通勤中のけが・病気・死亡に備える労災保険について、遺族年金、請求期限、小規模農林水産業への適用などを見直す法案です。

成立すれば、夫にだけあった遺族年金の年齢要件がなくなり、一部の小規模な個人経営の農林水産業も労災保険の対象になります。

公式資料:厚生労働省「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案の概要」

💡 一言で言うと

夫への遺族年金を広げ、小規模農林水産業にも労災保険を広げます。

現行制度では、業務災害で妻が亡くなった場合、夫が遺族補償年金を受けるには「死亡時に55歳以上」または「一定の障害がある」ことが必要です。改正後は、この夫だけの要件をなくします。

また、農業・林業・水産業の一部では、小規模な個人経営の場合、労災保険への加入が任意とされてきました。今回の法案では、この暫定的な例外を廃止し、対象を広げます。

🔑 何が変わるのか

主な改正点は次の5つです。

  • 夫にだけあった遺族年金の年齢・障害要件を撤廃
  • 遺族が1人の場合の年金額を、給付基礎日額175日分に統一
  • 判断が難しい疾病について、労災請求などの時効を2年から5年へ
  • 一部の小規模な個人経営の農林水産業も労災保険の対象へ
  • 一人親方などの特別加入団体について、要件や改善命令を法令上明確化

このほか、社会復帰促進等事業に関する決定への不服申立ての仕組みも、労災保険給付と同じルートにそろえます。

🏛️ 背景 なぜ今この改正なのか

労災保険は、仕事や通勤が原因でけが、病気、障害、死亡が生じたときに、労働者や遺族を支える制度です。

今回の法案の背景には、政府資料で示されているように、就業構造の変化や働き方の多様化があります。

特に、遺族補償年金では、夫と妻で扱いが異なってきました。制度ができた当時は、夫は一定年齢未満であれば自力で生計を立てられるという考え方が制度に反映されていました。しかし、共働き世帯や家計のあり方は変化しています。

もう一つの背景が、小規模な農林水産業です。労災保険は原則として労働者を使う事業に適用されますが、一部の農林水産業では、事業場の把握が難しいことなどを理由に、暫定的に任意加入とされてきました。今回の法案は、この例外を廃止する方向です。

📊 現行制度と改正後の違い

1. 遺族補償年金の「夫だけの要件」をなくす

遺族補償年金は、労働者が業務災害で亡くなったとき、死亡当時にその労働者の収入によって生計を維持していた遺族に支給される年金です。

現行

配偶者の扱いは、夫と妻で違います。

  • 妻:年齢にかかわらず対象
  • 夫:妻の死亡時に55歳以上、または一定の障害の状態にある場合に対象
改正後

夫にだけ課されていた要件を撤廃します。

  • 配偶者として、夫婦で同じ扱いにする
  • 夫にも、死亡時に労働者の収入で生計を維持していたという要件は残る

関連して、船員保険の遺族年金や、石綿健康被害救済法の特別遺族年金などにも同様の見直しが入ります。

2. 遺族が1人の場合の年金額を175日分に統一

遺族補償年金の額は、「給付基礎日額」をもとに計算します。給付基礎日額とは、労災給付を計算するための1日あたりの賃金額に近い考え方です。

現行

遺族が1人の場合の年金額は、原則として次の扱いです。

  • 通常:給付基礎日額の153日分
  • 55歳以上または一定の障害がある妻:給付基礎日額の175日分
改正後

遺族が1人の場合は、一律で給付基礎日額の175日分になります。

たとえば給付基礎日額が1万円なら、遺族が1人の場合の年額は、153万円から175万円になります。

3. 一部の労災請求の時効を2年から5年へ

労災保険給付には、請求できる期間があります。これを消滅時効といいます。

現行

療養補償給付や休業補償給付などは、原則として2年で時効にかかります。障害補償給付や遺族補償給付などは5年です。

改正後

病気の性質上、仕事が原因かどうかを簡単に判断しにくいものとして政令で定める疾病について、療養補償給付などの請求権の時効を2年から5年にします。

具体的にどの疾病が対象になるかは、法案本文では政令に委ねられています。

労働基準法上の災害補償の請求権についても、同じ考え方で、対象疾病の場合は2年から5年に延びます。

4. 小規模な個人経営の農林水産業も労災保険の対象へ

労災保険は、労働者を使う事業を原則として対象にしています。ただし、一部の農林水産業では、暫定的に任意加入とされている事業があります。

現行

公表資料では、労災保険の暫定任意適用事業として、次のような例が示されています。

  • 農業:常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の事業
  • 林業:労働者を常時には雇用せず、年間使用延べ労働者数が300人未満の個人経営の事業
  • 水産業:常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の事業

一定の危険・有害作業を行う農業や、一定規模以上の漁船による水産業などは、現行でも強制適用の対象です。

改正後

この暫定措置を廃止し、現在は任意適用とされている一部の小規模な個人経営の農林水産業も、労災保険の適用事業にします。

事業主には、労働保険の成立手続きや保険料の申告・納付が関係します。労働者側から見ると、業務中や通勤中の災害について、労災保険による給付につながる制度になります。

なお、この改正で新たに対象となる事業数・労働者数の全体は、法案資料からは確認できません。厚生労働省資料では、令和7年9月時点で任意加入している農林水産業は、合計25,789事業、69,315人とされています。

5. 特別加入団体の要件を法令で明確にする

労災保険には、労働者ではない一人親方や一部の自営業者などが加入できる「特別加入」という仕組みがあります。こうした加入手続きなどを行う団体が、特別加入団体です。

現行

特別加入団体の要件は、通達などで定められている部分があります。

改正後

特別加入団体について、労災保険に関する業務や業務災害防止の活動を適切に行えることなどの要件を、法令に規定します。

また、団体の運営に改善が必要な場合、政府が業務改善命令を出せるようにします。命令に違反した場合、その団体についての保険関係を消滅させることも可能になります。

👥 影響を受ける人・対象者

この法案の影響を受ける主な対象は、次の人や事業者です。

  • 業務災害で亡くなった労働者の配偶者
  • 特に、妻を亡くした夫で、現行制度では年齢要件などにより遺族年金の対象外となる人
  • 小規模な個人経営の農業・林業・水産業で働く労働者
  • そのような事業を営む事業主
  • 一人親方やフリーランスなどの特別加入に関わる団体
  • 労災保険給付や社会復帰促進等事業の決定に不服申立てをする人

📅 施行日と経過措置

主な施行日は、令和9年4月1日(2027年4月1日)です。

ただし、小規模な農林水産業の暫定任意適用事業を廃止する部分は、公布の日から5年以内に政令で定める日に施行されます。

遺族補償年金については、施行日前に支給事由が生じたものや、施行日前の期間に係る年金額については、従前の制度が使われます。

特別加入団体については、施行時点ですでに承認を受けている団体は、新制度上の承認を受けたものとみなされます。

📖 用語解説

労災保険

仕事中や通勤中のけが、病気、障害、死亡に対して、医療費や休業中の給付、年金などを行う制度です。

遺族補償年金

業務災害で労働者が亡くなったとき、一定の遺族に支給される年金です。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などが対象になり得ます。

給付基礎日額

労災保険の給付額を計算する基礎となる1日あたりの金額です。原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額をもとにします。

消滅時効

一定期間が過ぎると、給付を請求する権利が消える仕組みです。今回の法案では、判断が難しい疾病について、2年の時効を5年にする見直しが入ります。

特別加入

一人親方や一部の自営業者など、通常の労働者ではない人が、一定の条件で労災保険に加入できる制度です。

🔗 参考リンク


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