暮らし・福祉

内密出産支援体制整備法案

内密出産に対応する医療機関確保、相談支援、子どもの養育環境と出自情報の仕組みを国・自治体の施策にする法案です。

第221回国会参法第8号提出者: 参議院議員提出: 2026/5/18
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次: 参議院 委員会

先委先本後委後本成立

一言で言うと

身元を一部の人だけに明かして出産する人を支えるため、医療、相談、子どもの出自情報の仕組みを作り、母子を孤立させにくくします。

この法案のポイント

制度変更を表すイラスト

何が変わる?

内密出産への支援体制を法律に位置づけます。

対応できる医療機関の確保、相談支援、子どもの養育環境、出自情報を知る仕組みづくりを国と自治体の施策にします。

背景やタイミングを表すイラスト

なぜ今?

通知や個別対応だけでは支援体制が法律上整理されていません。

予期しない妊娠や孤立した出産への対応、内密出産で生まれた子どもの出自情報の扱いが課題になっています。

関係する人や地域を表すイラスト

誰に関係する?

妊娠・出産に悩む女性、子ども、医療機関、児童相談所に関係します。

医療機関と自治体、児童相談所の連携、相談支援、養育環境の確保、情報保存に関わります。

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【参法#8】内密出産に、国と自治体の支援体制を整える法案

🤰 妊娠・出産 / 🏥 内密出産 / 👶 子どもの出自

この法案は、氏名や住所などを医療機関の一部の職員だけに明かして出産する「内密出産」について、国や自治体の役割を法律で定めるものです。

成立すれば、対応できる医療機関の確保、相談支援、子どもの養育環境、出自に関する情報を知るための仕組みづくりなどが、国の基本的な施策として位置づけられます。参考:衆議院・議案本文

💡 一言で言うと

身元を一部だけに明かす出産に、医療・相談・出自支援の仕組みを作る法案です。

内密出産とは、妊娠中の女性が、氏名や住所など本人を特定する情報を、出産に関わる医療機関の一部の職員だけに明らかにして出産することです。

この法案は、内密出産を希望する女性が出産に必要な医療を受けられるようにし、出産後の子どもについても、できる限り家庭と同じような養育環境を確保し、将来、出自に関する情報を知るための制度を整えることを目的にしています。

位置づけとしては、個別の出産手続を細かく決める法律というより、国・自治体・医療機関・児童相談所などが連携するための基本ルールを置く法案です。

🔑 何が変わるのか

この法案の核心は、内密出産への対応を、通知や個別対応だけでなく、法律上の施策として位置づけることです。

法案では、国と地方自治体に対して、内密出産に対応するための体制整備に関する責務を定めています。

主な変更点は、次の通りです。

* 内密出産に対応できる医療機関の確保を国の施策にする

* 医療機関、自治体、児童相談所などの連携体制を整える

* 医療機関が内密出産に対応する際の経済的負担の軽減に配慮する

* 妊娠・出産・育児に深刻な悩みを抱える女性が、相談支援や民間団体の支援を利用しやすくする

* 内密出産で生まれた子どもの養育環境を確保する

* 子どもが将来、自分の出自に関する情報を知るための制度を整える

* 医療機関や児童相談所の職員向けに、研修や啓発を進める

* 内密出産の実態や、子どもの養育環境について定期的に調査し、公表する

つまり、出産する女性だけでなく、生まれた子ども、医療機関、自治体、児童相談所まで含めた仕組みを法律で整えようとする内容です。

🏛️ 背景:なぜ今この法案なのか

背景にあるのは、予期しない妊娠や、家庭環境、貧困、暴力、虐待などにより、妊娠・出産を周囲に相談できない人がいるという現実です。

こども家庭庁の「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第21次報告)」では、心中以外の虐待死は44例・48人で、このうち0歳児が33人、68.8%を占めています。さらに、0歳児のうち日齢0日児が16人とされています。

同報告では、妊娠期・周産期における問題として、遺棄、予期しない妊娠・計画していない妊娠、妊婦健康診査の未受診、妊娠届の未提出なども挙げられています。

内密出産をめぐっては、熊本市の慈恵病院で2021年12月に1例目が実施され、熊本市の検討会報告書では、2024年12月末時点で40例とされています。

国は2022年9月30日、法務省と厚生労働省の連名で「妊婦がその身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産したときの取扱いについて」という通知を出しました。この通知では、身元情報を明らかにした出産を大原則としつつ、医療機関が内密出産を受け入れる場合の関係機関の対応を整理しています。

今回の法案は、こうした現行の通知や現場対応を踏まえ、内密出産に対応する体制を法律上の施策として整えるものです。

📊 現行制度と改正後の違い

現行制度:通知や個別対応をもとに動いている

現在、内密出産については、専用の法律で細かい手続が定められているわけではありません。

2022年の国の通知では、医療機関が内密出産を受け入れる場合の流れとして、次のような対応が示されています。

* 妊婦から医療機関への相談

* 医療機関から、身元情報を明らかにした出産や、出産前後に受けられる支援について説明

* 身元情報を明らかにすることに同意しない場合、仮名などで診療録を作成

* 出産

* 出生届の提出を促す

* 母が出生届を提出する意向がない場合、医療機関から児童相談所に要保護児童として通告

* 児童相談所から市区町村に、戸籍作成に必要な情報を提供

* 市区町村長が戸籍を作成

* 医療機関、児童相談所、市区町村が連携して子どもを支援

また、子どもの出自を知る権利に関わる情報については、医療機関が母の身元情報を適切に管理し、永年保存することが望ましいとされています。

ただし、情報をどのように保存し、いつ、どの条件で子どもに開示するかについては、現行の通知だけでは全国共通の法律制度として定まっていません。

改正後:国と自治体の責務を法律に書き込む

この法案が成立すると、国と地方自治体には、内密出産に対応するための体制整備に関する施策を進める責務が定められます。

国は、必要な法制上・財政上の措置を講じることになります。財政上の措置とは、制度を動かすために必要なお金の手当てをすることです。

法案本文では、国が講じる基本的施策として、次の内容が書かれています。

1. 医療機関の確保

国は、内密出産を希望する妊娠中の女性が出産に必要な医療を受けられるよう、内密出産に対応する医療機関を確保するための措置を講じます。

あわせて、自治体、医療機関、その他の医療機関が連携できる体制も整えます。

また、医療機関が内密出産に対応する際の経済的負担の軽減にも配慮するとされています。

2. 妊娠中の女性への相談支援

国は、内密出産を希望する女性や、家庭環境などの事情により妊娠・出産・育児に深刻な悩みを抱える女性が、支援を利用しやすくするための環境を整えます。

法案では、妊産婦等生活援助事業や、民間団体による支援などが挙げられています。

妊産婦等生活援助事業は、妊産婦が生活や出産、育児に困難を抱える場合に、相談や生活面の支援につなげるための事業です。

また、貧困、暴力、虐待などの問題を抱えている場合には、それぞれの問題に対応する施策との連携も図るとされています。

3. 内密出産を希望しなくなった場合の支援

法案は、出産の前後に、内密出産としての対応を希望しないことにした女性への支援も定めています。

その場合でも、妊産婦等生活援助事業や妊婦等包括相談支援事業などを通じて、必要な支援が確実に提供されるよう、自治体、医療機関、関係機関の連携を確保するとしています。

妊婦等包括相談支援事業は、妊娠期から面談などを通じて、出産・子育ての相談に応じ、必要な支援につなぐ制度です。

4. 生まれた子どもの養育環境

内密出産で生まれた子どもについては、児童相談所、地方自治体の関係機関、医療機関などが連携し、良好な養育環境を確保するための措置を講じるとされています。

基本理念にも、内密出産で生まれた子どもが心身ともに健やかに育つよう、できる限り家庭と同じような養育環境を確保することが書かれています。

5. 子どもが出自情報を知るための仕組み

この法案の大きな柱の一つが、内密出産で生まれた子どもが、自分の出自に関する情報を知るための制度づくりです。

法案では、年齢など一定の要件のもとで、出自に関する情報の開示などの制度を構築することが国の施策として書かれています。

さらに、子どもが内密出産で生まれた事実を知ることができるよう、養育する人に対する相談支援も整えるとしています。

ここでいう出自に関する情報には、母の身元情報や、出生に関わる情報が含まれます。具体的な開示の年齢や手続は、この法案本文だけでは定められていません。

6. 職員研修と実態調査

国は、医療機関の職員や児童相談所の職員などが内密出産について理解を深めるため、研修や啓発を行うとされています。

また、内密出産をめぐる状況や、生まれた子どもの養育環境について、定期的に調査し、その結果を公表することも定めています。

調査や公表にあたっては、内密出産をした女性、内密出産で生まれた子ども、その家族の秘密や私生活の平穏を害しないよう配慮することも書かれています。

🧩 「内密出産」と「匿名出産」の違い

この法案が中心に置いているのは、内密出産です。

内密出産では、女性は氏名や住所などの身元情報を、医療機関の一部の職員には明らかにします。つまり、医療機関の中で情報を預かる人がいる形です。

一方、法案の附則では、女性が氏名や住所などを、医療機関の職員にも明らかにせず出産することを希望する場合の扱いについても触れています。

この場合については、実態などを踏まえて、必要に応じて検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じるとされています。

つまり、法案本文の中心は内密出産ですが、医療機関にも身元を明かさない出産の扱いも、今後の検討事項として置かれています。

👥 影響を受ける人・対象者

妊娠・出産に深刻な悩みを抱える女性

最も直接関係するのは、家庭環境、貧困、暴力、虐待、周囲に知られたくない事情などにより、妊娠・出産を相談しにくい女性です。

この法案は、内密出産そのものだけでなく、妊娠・出産・育児に関する相談支援や、民間団体の支援を利用しやすくすることも対象にしています。

医療機関

内密出産に対応する医療機関は、妊婦の身元情報の管理、出産時の医療対応、児童相談所への通告、自治体との連携など、多くの実務を担います。

法案では、対応できる医療機関の確保や、医療機関の経済的負担の軽減にも触れています。

地方自治体・児童相談所

自治体や児童相談所は、妊娠中の女性への支援、生まれた子どもの保護、戸籍や養育環境に関わる実務で重要な役割を担います。

法案では、地方自治体にも区域の実情に応じた施策を進める責務が定められています。

また、児童相談所は、内密出産により生まれた子どもの援助方針を検討する際、その子どもの出産が内密出産によるものだったことに配慮するとされています。

内密出産で生まれた子ども

この法案は、出産時の母子の安全だけでなく、生まれた子どもの将来にも関わります。

とくに、養育環境の確保と、出自に関する情報を知るための制度づくりが大きなポイントです。

子どもが成長した後、自分がどのように生まれたのか、親に関する情報をどう知るのかという問題に関係します。

📅 施行日と今後の検討

この法律案の施行日は、公布の日です。

成立して公布されれば、その日から施行される形です。

また、附則では、政府が施行後速やかに検討する事項として、次の内容が挙げられています。

* 内密出産により生まれた子どもについて、特別養子縁組制度の利用を促進する観点からの検討

* 内密出産に対応できる医療機関の確保状況などを踏まえた、内密出産に関する周知方法の検討

* 医療機関の職員にも身元情報を明らかにせず出産することを希望する場合の取扱いの検討

特別養子縁組制度は、生みの親との法的な親子関係を終了し、養親との間に法的な親子関係を作る制度です。内密出産で生まれた子どもの養育環境をどう確保するかと関係します。

🗣️ 国会での議論の論点

この法案の論点は、主に次の点です。

どの地域で、どの医療機関が対応できるようにするのか

法案は、内密出産に対応できる医療機関の確保を国の施策としています。

ただし、法案本文には、対応医療機関の数、地域ごとの配置、指定方法までは書かれていません。

出産は緊急性を伴う場合があります。実際に制度を動かすには、地域ごとにどの医療機関が対応できるのか、搬送や転院の体制をどうするのかが課題になります。

費用を誰が負担するのか

法案では、医療機関による内密出産への対応について、経済的負担の軽減に配慮するとされています。

具体的な補助額や、出産費用をどの範囲で公費負担するかは、法案本文では決まっていません。

今後の制度設計では、医療機関の負担、妊婦本人の負担、国や自治体の財政措置のあり方が焦点になります。

子どもの出自情報をどう扱うのか

内密出産では、母の身元情報を守ることと、子どもが将来自分の出自を知ることの両方が関係します。

法案は、年齢など一定の要件のもとで、出自に関する情報の開示等の制度を構築するとしています。

その具体的な年齢、手続、情報の保存主体、開示の範囲は、今後の制度づくりに委ねられています。

医療機関にも身元を明かさない出産をどう扱うのか

内密出産は、医療機関の一部職員には身元を明かす仕組みです。

一方、附則では、医療機関の職員にも氏名や住所などを明らかにせず出産することを希望する場合の取扱いについて、実態を踏まえて検討するとされています。

子どもの出自情報、母子の安全、医療現場の対応、戸籍や児童相談所の実務に関わる論点です。

🧾 法案から確認できること・今後決まること

この法案から確認できるのは、国や自治体が取り組むべき方向性です。

具体的には、医療機関の確保、相談支援、児童相談所との連携、子どもの養育環境、出自情報を知るための制度、研修、実態調査などが書かれています。

一方で、次の点は法案本文だけでは具体的に決まっていません。

* 内密出産に対応する医療機関を何か所確保するのか

* どの地域で、どの医療機関が対応するのか

* 出産費用や医療機関の負担をどの範囲で支援するのか

* 子どもが何歳になったら出自情報の開示を求められるのか

* 出自情報をどの機関が、どの方法で保存するのか

* 医療機関にも身元を明かさない出産をどう扱うのか

このため、法案が成立した場合でも、実際の制度運用には、政府の法制上・財政上の措置や、自治体・医療機関との連携ルールの整備が必要になります。

📤 提出者・所属

この法案は、内閣提出法案ではなく、参議院議員による議員立法です。

参議院の議案審議情報では、種別は法律案(参法)、提出番号は8、提出日は令和8年5月19日、先議区分は本院先議、提出者区分は議員発議とされています。

発議者は、伊藤孝恵議員です。

* 伊藤孝恵

* 所属院:参議院

* 選挙区:愛知県選挙区

* 所属会派:国民民主党・新緑風会

* 所属政党:国民民主党

参議院法制局の参法一覧では、提出者は「伊藤孝恵議員」と記載されています。公開されている参議院の議案審議情報および参議院法制局の一覧からは、提出者以外の賛成者名は確認できません。

🔭 今後の見通し

この法案は、参議院に提出された議員立法です。

法律として成立するには、参議院と衆議院での審議・議決が必要です。

成立した場合、施行日は公布の日です。その後、国は医療機関の確保、支援体制、出自情報の制度、特別養子縁組制度との関係、周知方法などについて、具体的な措置を進めることになります。

内密出産は、妊娠・出産をめぐる孤立、母子の安全、子どもの養育環境、出自を知る権利が重なるテーマです。この法案は、その対応を国の制度としてどう整えるかを問う内容です。

🔗 参考リンク

* 参議院 議案審議情報:内密出産に対応するための体制の整備等の促進に関する法律案

* 衆議院 議案本文:内密出産に対応するための体制の整備等の促進に関する法律案

* 参議院法制局:第221回国会 参法・修正案一覧

* 参議院法制局:内密出産に対応するための体制の整備等の促進に関する法律案要綱(PDF)

* こども家庭庁:妊婦がその身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産したときの取扱いについて(PDF)

* 熊本市:緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会

* 熊本市:緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会報告書(PDF)

* こども家庭庁:こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第21次報告)

* こども家庭庁:妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施

* 外務省:児童の権利に関する条約 全文

* e-Gov法令検索:児童福祉法


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