暮らし・福祉

医療的ケア児支援法改正案

医療的ケア児支援法の対象を、成人後も医療的ケアが必要な人や重症心身障害者まで広げ、就労、住まい、災害時などの支援を法律に明記する改正です。

第221回国会衆法第29号提出者: 衆議院議員提出: 2026/7/9
成立

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先委先本後委後本成立

一言で言うと

医療的ケアが必要な子どもが大人になった後も、医療や学び、仕事、住まいなど地域での支援が途切れないようにし、本人と家族の暮らし全体を支える改正です。

この法案のポイント

制度変更を表すイラスト

何が変わる?

成人後も医療的ケアが必要な人と、重症心身障害者を支援対象に加えます。

一時預かり、夜間の在宅支援、通学時の移動、就労、住まい、災害時の支援を法律に明記します。大学や高専なども教育支援の対象に加えます。

背景やタイミングを表すイラスト

なぜ今?

子ども向けの支援が、18歳以降に途切れやすい課題へ対応します。

0〜19歳の在宅の医療的ケア児は、2024年に2万1,126人と推計されています。高校卒業後は、放課後等デイサービスなど子ども向け制度から医療・福祉・就労の支援先が切り替わります。

関係する人や地域を表すイラスト

誰に関係する?

医療的ケアが必要な本人と家族、重症心身障害者に関係します。

大学などを含む学校には支援体制の整備、自治体と支援センターには成人後の相談や災害対応が求められます。事業主には、本人の能力と特性に応じた雇用管理の努力義務が置かれます。

詳しく読む

医療的ケア児の支援を成人後までつなぎ、暮らし全体を支える法律へ

🫁 日常的な医療ケア / 🧑 成人後の生活 / 🏫 学び・仕事・住まい

人工呼吸器やたんの吸引、経管栄養などが日常的に必要な子どもの支援法を、成人後の生活まで広げる改正案です。重症心身障害者も対象に加え、教育、就労、住まい、災害対策などの支援を法律に明記します。衆議院「法律案要綱」

💡 一言で言うと

子ども中心だった支援法を、成人期を含む暮らし全体の支援法に広げます。

現行法の主な対象は、日常的に医療的ケアが必要な18歳未満の子どもと、高校などに在籍する一部の18歳以上の人です。成人後についても配慮規定などはありますが、法律全体は「医療的ケア児」を中心に組み立てられています。

改正案では、医療的ケア児が成人した後も直接の支援対象とし、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重なる「重症心身障害者」も加えます。一時預かりや夜間支援、通学時の移動支援、就労、住居、災害時の支援まで、対象となる施策を具体化します。

🔑 何が変わるのか

支援対象を成人まで広げる

法律の名称を「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」に変更します。

新たな「医療的ケア児等」には、次の人が含まれます。

  • 現在の医療的ケア児
  • 医療的ケア児が成人した後も、日常生活に恒常的な医療的ケアが必要な人
  • 日常生活や社会生活に恒常的な医療的ケアが欠かせず、自立した生活が難しい人

さらに、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重なる重症心身障害者と、その家族も法律の対象になります。

日常生活の支援内容を具体化する

現行法は「医療的ケアの実施その他の日常生活に必要な支援」と大きく定めています。

改正案では、国や自治体が整備する支援として、次の内容を具体的に挙げます。

  • 一時的に預かって必要な保護を行うサービス
  • 夜間に自宅で受ける医療・福祉サービス
  • 通学などの移動支援
  • 重度訪問介護(重い障害のある人の在宅生活や外出を支える障害福祉サービス)
  • 福祉サービス事業所への看護師などの配置促進

本人の地域生活を支えることに加え、家族の身体的・精神的な負担を軽くすることも条文に明記します。

18歳以降も地域医療を切れ目なくつなぐ

国と自治体に対し、医療的ケア児や重症心身障害児が18歳になった後も、地域で必要な医療を継続して受けられるようにする措置を求めます。

現行法にも成人後への配慮はありますが、改正案では「切れ目ない医療の提供」を独立した条文として設けます。

就労支援を法律に加える

国と自治体は、ハローワーク、地域障害者職業センター、医療的ケア児等支援センター、教育委員会などの連携を進めます。

支援内容には、次のものが含まれます。

  • 在宅勤務など、本人の状態に応じた働き方の確保
  • 就職後に働き続けるための支援
  • 雇用する事業主への支援
  • 学校段階からの就労準備

事業主には、本人の能力を適切に評価し、特性に応じた雇用管理によって雇用の安定を図る努力義務を設けます。

地域で暮らすための住居を確保する

本人が希望する地域で自立した生活を送れるよう、国と自治体に住居確保のための措置を求めます。

本人や家族が希望する期間入居できる共同生活の住居などが想定されています。

学校での支援対象を大学などにも広げる

適切な支援を行う責務を負う学校の範囲に、次の教育機関を加えます。

  • 大学
  • 高等専門学校
  • 高等課程を置く専修学校

学校側が講じる措置についても、保護者の付添いがなくても授業を受け、修学旅行などの学校行事に参加できるようにすることを明記します。

看護師などに加え、一定の資格や研修に基づいてたんの吸引などを行える介護従事者の配置も例示します。生涯学習の機会を確保するための措置も新設されます。

社会的養護と家族同士の交流を支援する

家庭で暮らすことが難しく、里親や施設などによる社会的養護が必要な医療的ケア児、重症心身障害児について、できる限り家庭に近い環境で養育できる支援体制を整えます。

本人や家族が孤立しないよう、同じ立場の人同士が交流し、支え合う活動への支援も法律に加えます。

🏛️ 背景 なぜ今この改正なのか

医療技術の進歩により、人工呼吸器や胃ろうなどを使用しながら自宅で生活する子どもが増えています。

こども家庭庁の推計では、0~19歳の在宅の医療的ケア児は、2005年の9,987人から2024年には2万1,126人となりました。

2021年には医療的ケア児支援法が成立し、国や自治体、保育所、学校の責務が定められました。医療的ケア児支援センターも整備され、2026年5月には47都道府県すべてに設置されています。

一方、子どもが成人すると、医療、教育、障害福祉、就労などの制度が切り替わります。現行法は成人後への配慮を定めていますが、直接の支援対象や具体的な施策は限定的です。

現行法には施行後3年を目途とする検討規定があります。今回の改正案は、医療的ケア児の成長などを踏まえ、成人後を含む支援へ法律の枠組みを広げる内容です。

学校で続く保護者の付添い

文部科学省の2024年度調査では、医療的ケア児は特別支援学校に8,700人、幼稚園や小中高校に2,559人が在籍していました。

幼稚園や小中高校では、学校生活で保護者が付き添う子どもが324人、全体の12.7%でした。登下校だけ保護者が付き添う子どもも1,020人、39.9%に上ります。

改正案が授業や修学旅行への参加、通学時の移動支援を具体的に盛り込む背景には、こうした学校生活での付添いの実態があります。

📊 現行制度と改正後の違い

法律の対象

  • 現行
  • 18歳未満の医療的ケア児
  • 高校などに在籍する一部の18歳以上の人
  • 成人後は基本理念上の配慮や、一部の相談支援を規定
  • 改正後
  • 医療的ケア児
  • 成人後も恒常的な医療的ケアが必要な人
  • 恒常的な医療的ケアが必要で、自立生活が難しい人
  • 重症心身障害児・者
  • それぞれの家族

日常生活

  • 現行
  • 医療的ケアなど、日常生活に必要な支援を包括的に規定
  • 改正後
  • 一時預かり
  • 夜間の在宅サービス
  • 通学などの移動支援
  • 重度訪問介護
  • 福祉事業所への看護師配置などを明記

教育

  • 現行
  • 幼稚園、小中高校、特別支援学校などが中心
  • 保護者の付添いなしで医療的ケアを受けられる体制を整備
  • 改正後
  • 大学、高等専門学校、高等課程を置く専修学校を追加
  • 授業や修学旅行などへの参加を明記
  • 介護従事者の配置と生涯学習も対象

成人後の生活

  • 現行
  • 成人後の医療・福祉サービスへの配慮を基本理念に規定
  • 改正後
  • 18歳以降の切れ目ない医療
  • 就労支援
  • 地域で暮らすための住居確保を独立して規定

支援センター

  • 現行
  • 都道府県知事が指定または運営
  • 相談、情報提供、研修、関係機関の調整が中心
  • 改正後
  • 指定都市、中核市、政令で定める市、特別区も設置可能
  • 成人や重症心身障害者にも対象を拡大
  • 個別避難計画の作成協力
  • 災害時の情報提供を追加

🏢 支援センターと自治体の役割も拡大

「医療的ケア児支援センター」は「医療的ケア児等支援センター」に名称を変えます。

対象者本人や家族への相談支援に加え、災害時の役割を強化します。具体的には、避難先や支援者などを事前に定める個別避難計画の作成に協力し、災害時には市区町村と連携して必要な情報を提供します。

都道府県などは、本人や家族、専門家、医療・福祉・教育・就労の関係者が参加する「医療的ケア児等支援地域協議会」を設置できるようになります。

政府には実施した施策の随時公表を義務づけ、自治体にも実施状況を公表する努力義務を設けます。国と自治体は地域ごとの支援状況を検証し、格差を是正する措置を講じます。

👥 影響を受ける人・機関

本人と家族

子どもから成人への移行だけでなく、日常生活、学習、就労、住居、災害時までを一つの法律で扱うことになります。

学校や保育施設

大学なども含め、医療的ケアや介護を担う人材の配置、学校行事への参加、保護者の付添い負担への対応が求められます。

自治体と支援センター

成人や重症心身障害者への相談、災害対策、関係機関の調整、地域格差の検証などが業務に加わります。

事業主

本人の能力や特性に応じた雇用機会と雇用管理を行う努力義務が設けられます。

この法案は、支援の方向と行政、学校、事業主の役割を定める基本法的な改正です。個人が利用できるサービス量や給付額、人員配置基準は法案に数値で定めず、別の制度や予算、自治体の事業で具体化する構成です。

📅 施行日と見直し

成立した場合、施行日は2027年4月1日です。

現在の医療的ケア児支援センターは、改正後の医療的ケア児等支援センターとして指定を受けたものとみなされます。

改正法の施行後3年を目途に、実施状況を踏まえて再検討します。

📤 提出者・所属

  • 提出日:2026年7月10日
  • 提出方法:衆議院「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」による委員会発議
  • 提出者:丹羽秀樹・衆議院議員
  • 役職:同特別委員長
  • 所属会派・政党:自由民主党
  • 議案提出の賛成者:衆議院の議案情報には個別の賛成者が掲載されていません

🔗 参考リンク


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